「モンテーニュ エセー抄」
ミシェル・ド・モンテーニュ  宮下志朗編訳 みすず書房
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 ◎ところで法律が信用を維持しているのは、それが正しいからでなく、ひたすら法律であることによる。それこそ法律という権威の不思議な根拠なのであって、ほかにはなんの根拠もない。そのことが法律にも有利に働く。法律というものは、しばしば愚者によって作られる。たいていは、平等を憎み、公正を欠くような人々によって作られる。とにかく、からっぽで、無節操な人間によって作られるのだ。
 ◎自分の人生にだけ耳を傾けようではないか──人間は、自分にとりわけ必要なことは、すべて、自分に向かって話すものなのだから。自分自身の判断が何度となく間違ったことを覚えている人間が、それでもけっして自分の判断に不信をいだかないというのならば、その人は馬鹿にきまっている。
「経験について」より

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 随筆といえば日本にも名著がたくさんあります。西洋ものでは何といってもパスカルの「パンセ」ではないでしょうか。そのパスカルが好きでない随筆が、モンテーニュの「エセー」なのだそうです。パスカルは「パンセ」の中でモンテーニュを批判しているのです。その主な理由は、モンテーニュが「その著作全体を通じて、だらしなくふんわりと死ぬことばかり考えている」からだそうです。
 だからこそ、と僕は思うのですが、僕には何よりぴったり、とても面白く読めたのです。偶然数ヶ月前にセネカの本を読み、翻訳者の文章が気に入らなくてがっかりしたのですが、モンテーニュはセネカの言葉も多く引用しています。法律や医学の話、死についてなど、うんうんと共感することが多々ありました。
これは本当にお奨めです。