〜深町さんの指から解き放たれる音楽は、自分にとって「ピアノの響き」という概念の中で、大切な見本と言って良いものでした。演奏されている時の息使いや顔つき迄を思い出します。〜 一小節か二小節で深町さんの音楽と、又、深町さんの響きと解るのが深町さんの個性なんでしょう。二年前の十月十六日鎌倉で、調律を終えた後、僕は深町さんの奏でるショパンとシューベルトを、二十年以上のお付き合いの中で始めてちゃんと聴かせていただきました。もし、彼らとほぼ同時代を生きた、F.リストや、N.パガニーニ(バイオリニストですが)がショパンやシューベルトを当時奏でたとしたら、こんなシューベルトやショパンになるのではないだろうか? と、即興演奏家 深町さんが奏でる思いがけない内声と外声の絡みの凄さに少し圧倒されつつも、素敵な個性に改めて感じ入ったのを思い出します。天才的な個性の本質の部分は模倣できなく、それは人を心から感動させ、いつまでも留まり、優しく包んでくれる物ではないでしょうか。深町さんの音楽の感動をこうして多くの人と分かち合えること、本当に“感謝"以外の言葉が見つかりません。 二十数年前ですが、深町さんが不等分律の調律法で即興演奏をしたらどうなるのか?、自分にとって非常に興味深い事でもあり、当時熱心に深町さんにお話をし、赤坂の霊南坂教会での即興演奏のコンサートを不等分律で調律をさせていただいた事があります。F DurやC Durの長3度系の和音が綺麗で、シャープやフラットが増えて行くと和音が濁る訳ですが、深町さんの個性は、バロックや古典派の作曲家達のそれとは違うもので、演奏会を終えた後、僕は深町さんの創作する音楽の凄さに感動したのを覚えています。霊南坂教会での即興演奏コンサートは、このコンサートともう一度(最初だけ不等分律で後はすべて通常の平均律で)、FM東京ホールで二回(1回は2台の異なったピアノを使い、もう1回は舞踏家とのコラボでした)、目白のカテドラル教会で1回(だったと思います)と、即興演奏コンサートを、87年〜88年頃5回程連続して行なった事があります。ピアノの即興演奏ライブとして、どのコンサートも本当にすばらしい物でした。 |
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(敬称略)
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