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「 音の『美食家』」
  糸川 英夫  (Hideo Itokawa)
  - 1976年「SPIRAL STEPS」アルバム資料より -

深町さんが、私の脳裏に強烈な印象をやきつけたのは、ラジオの座談会で、遠山一行さんなどとご一緒したときである。
 
 このときのテーマは、無人島にたった一枚レコードを持っていくとしたら何を持っていくか、という課題で、遠山さんと私が期せずして、クラシックの音楽を選んだ時に、深町さんの示した激しい反応もしくは反撥である。「僕はクラシック音楽に抵抗する」といったようなかなり激しい言葉が深町さんの口から出た。それは私にとって予想外の出来事であったから、特別に印象が強かった。ここに一人の若い作曲家がいて、懸命にクラシック音楽の世界から脱出を試みている。かもめのジョナサンである。ジョナサンは、自分の試みが多くの他のかもめに通用しないのをくやしがる。

 激しく反撥する。「まだそうなのか」と絶望するのを払いのけるように、自分のアチーブメントを主張する。 この若い作曲家に私が一方ならぬ関心を持つようになったのはこれ以来である。 芸術は元来「個性的」なものである。それにいつかこれが普遍化される。普遍化の道程で、一種の条件反射が伴ってくる。

 日本のクラシックファンにとって、ベートーヴェンの第九シンフォニーは「年の瀬」を連想させる。これは作曲家ベートーヴェンが全く予期していなかったことであるが「年の瀬」という条件反射で、第九シンフォニーは「大衆化」される。大衆化されるということは、「個人の喪失」を伴っている。 深町さんの曲は、いづれも強烈な個性を発揮している。ロック調といわれている、ドラムのシンコペーションリズムにのって、一寸聴くと典型的な「ロック音楽」と思っても、忽ち強烈な個性、新しい音の発見と主張にぶつかる。 ロックリズムではない他の曲はいっそう個性的である。音の「美食家」というのが私の一貫した感じである。

 深町さんは、新しい音、新しい音色を追求する。この音色を芸術の世界に高めるために、新しい旋律と構成が計算されたように浮上する。

 いつの日にか、大衆がこれら一つ一つに条件をつけることによって「大衆化」するのであろうが、そのときにどこまで「個性」が生きつづけるか、それが私にとっては、興味でもあり、楽しみでもあり、恐れでもあると思っている。

 

 糸川 英夫(組織工学研究所長) - JAPAN宇宙開発ロケット開発者 - 

- 1976年「SPIRAL STEPS」アルバム資料より -
 

※役職名は、当時のものをそのまま掲載させていただいております。(敬称略)
 
糸川 英夫 1912~1999

日本の工学者。専門は航空工学、宇宙工学。ペンシルロケットの開発者であり、「日本の宇宙開発・ロケット開発の父」と呼ばれる。2003年、小惑星25143が糸川の名にちなんで「イトカワ」と命名された。その後、日本の探査機「はやぶさ」が打ち上げられ、2005年夏「イトカワ」に到達した。
 
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