いつも本当の音楽の姿、
真に純粋な音楽の世界を創りだしたいと願っている。
創るという言い方が高慢ならば、
手伝いたいのだ。
僕達人間が住んでいるこの「社会」という巨大都市に、
最もふさわしい音楽を捜していた僕にとって、
ニューヨークという現実の都市の示した僕への拒絶反応は、
大きな驚きだった。
僕はあの場所で息が出来なかった。
けれども間違いなくあの街は僕の好きなタイプの雰囲気だ。
高層ビルと車、群集心理と孤独感の交差する空間。
人間が創り出す最も大きな存在である都市。
それは汚らしいけれども美しい、
つまり矛盾した場所。
運動の本質は矛盾だという。
都市から人間の奔放なエネルギーを感じるのかもしれない。
だから僕は都市が好きだった。
けれども初めてむき出しに都市から嫌われた僕は
そのショックで長い時間自分の中に閉じ込められた。
僕にとって考える事だけが唯一の方法だと信じているからだ。
結局の所、いまに問題は解決していない。
何故なら新たな問題の方が前の答えより先に出来てくるからなのだ。
そして行為が存在の認識であるかのごとく音楽するのだ。
僕の没入する意識は深さを増さない。
ただその速度は日毎に速くなってきた。
純粋である事に疑いを持つ必要は無い。
真に今という瞬間を確認できたら、
その姿はねじれているにちがいない。
何故なら「今」は確実に純粋な空間の幾何学的構造を
ジョイントするためにあるからだ。
JUN FUKAMACHI age30
(1976年アルバム「SPIRAL STEPS」ライナーノーツより)